2016年1月15日金曜日

45 Years(『さざなみ』)

昨夜はシャーロット・ランプリングとトム・コートネイ共演の『45 Years』(邦題『さざなみ』として日本でも今年4月公開予定)の試写会に行ってきました。

結婚45周年のお祝いを目前に控えた老夫婦の日常が中心の、地味なお話です。



ちょうどこの映画を観に行った日の朝にアカデミー賞ノミネート発表があったんですね。帰宅後にシャーロット・ランプリングが主演女優賞にノミネートされたことを知りました。

日本語の公式サイトはこちら:
http://www.sazanami.ayapro.ne.jp/

ウィキペディア(英語)はこちら:
https://en.wikipedia.org/wiki/45_Years


派手ではないけれど、好きな作りの映画でした。

こういう地味な作品こそ、夫婦で映画館で観られたのはよかったです。「自宅でネットフリックス」じゃあ集中できないだろうし、そもそも最初からアクビをしていた夫が最後まで観るとは思えないので(´▽`;)。

私たちも年を取ったらこういう夫婦になるのだろうか、と、どうしても自分たちに当てはめて考えながら観てしまいました。試写会の会場の大半は中高年の観客でしたし、老夫婦の淡々とした結婚生活に自分たちを重ねて見ていた人は多いんじゃないでしょうか。

以下、ネタバレ含む感想です。



こんなシーンがあります。

しまい込んでいた楽譜を見つけたケイトが嬉しそうにピアノを弾き始めるんだけど、途中でやめて、そらで弾ける曲に切り替えるんです。どうってことないシーンかもしれないけど、これのおかげでお話に現実感が増した気がします。

夫は「あれはいったい何が言いたかったんだろう」と意味がわからなかったみたいですが、私は「ああいうことするの私だけじゃないんだ!」と、共感を覚えて好きでした。

ただ、夫の過去にあそこまで執着するかな?という点では、共感が難しいかなあ…。

50年以上も昔に雪山で遭難した夫の元恋人の遺体が見つかったことに端を発し、夫の行動に疑いを強めて行く妻の様子が痛々しいんですよね。

私だったら、45年も添い遂げた夫が、今さら過去の(死んだ)恋人を自分より優先するわけはないと、夫を信じようとすると思う(たぶん)。

まあ、夫が「遺体を見に行きたい」と言い出したら内心おだやかではいられない気持ちはわかるような気もしますけどね。


***これ以降、映画を観る前に読んでしまったらつまらないかもしれないネタバレがありますのでご注意ください***


そして屋根裏の写真の数々を見つけたとき、最後の何かがケイトの中で切れたのかもしれません。

自分たち夫婦の写真はほとんどないのに、元恋人の写真がたくさん残っている。私ならそれだけでもイヤなのに、スライドを次々と見て行くケイト(このシーンだけはキライでした…チカチカするので)は彼女のおなかが大きいことに気づいてしまうんです∑( ̄□ ̄;)

一瞬、「彼女が死んだのは子どもを産んだあとなんだろうか」という疑問がよぎりましたが、おそらくそれはないんでしょうね。少なくとも劇中子どもについての言及はないので、身重のまま亡くなったのでしょう。

そのこと自体は元彼女にとってもジェフにとっても悲劇だしものすごく痛ましいことだけど、ケイトにしてみれば「45年間、こんなだいじなことを一度も話してくれなかった」夫のことがにわかに全く知らない他人のように思えてしまったのかも。

また、「もし死んでなかったら彼女と結婚してた?」という質問に対し、ためらうこともなく「ああ、してた」と答えた理由もこれで合点がいきます。自分の子どもを宿していた女性ですから、すでに結婚の約束をしていたのかもしれませんし、ケイトもそう思ったかも。

いろんな思いが交錯しながらも、45周年の記念パーティにのぞむ2人。

ジェフは感動的なスピーチをして感きわまり、泣きだしてしまう。ふつうならあれだけ愛の言葉を言われて嬉しくないわけはないでしょうが、今のケイトの心にどれだけ響くのか…と、ちょっぴり思いつつ、結婚式の思い出の曲でのダンスに突入。

結局ハッピーエンドなのかな?と思っていたら、だんだんケイトの表情が変わっていき、なんと最後にはハッとしたように夫の手を振り払ってしまいます。

「えっΣ(゚∇゚*)!! 」と、めちゃくちゃ驚いた瞬間でしたが、もっと驚いたのは、そこで映画が終わってしまったこと。

「えっ、これで終わり?!」と思わず夫と顔を見合わせてしまいました(´▽`;)

けど、今思えば非常に賢い終わり方だったんでしょうね。

ケイトの心中について、いろいろ考えさせられますから。

「やっぱりこの45年間がなんだったんだろう、すべてウソだったのか、と思ってしまったんじゃないかなあ」「夫のことが信じられなくなったんだろうね」「続編が必要だ!」「離婚のあとが知りたいってこと?」「あ、やっぱり離婚するかな?」

などなど、夫と語ってしまいました。

まあ続編はないでしょうけどね(^-^;



ところで、本編とは関係ないことですが、年末年始に帰国した際に作っためがねをかけて初めて「くっきりはっきり」観られました。今までちょっとぼやけた状態で観ていたのがなんだったのか、というくらいキレイに見えて、大感激(*´▽`*)

これからしばらく、ずっと観たかった話題作を続けて観ようと思っているので、めがねの活躍に大いに期待しています(*^○^*)




13 件のコメント:

  1. 元恋人は身重だったんですか?
    昨日みたんですが、映画では古いセピア色のスライドで気がつかなかったです
    流石、女性ですな~
    2年前に還暦を迎えたオヤジです

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    1. 匿名さん、コメントありがとうございます。
      もう3ヶ月以上も経つのでうろ覚えですが、おなかが大きかったと思います^^

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  2. ここで触れられているケイトが弾いたピアノ曲がとても気になっています。始め譜面台に置かれていたのは譜面には「J.S.BACH」とはっきり見えたのですが、その後に弾いた曲名こそ彼女の心象がどう変化したのかを表現しているシーンなんだと思うんです。

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    1. 映録助さん、コメントありがとうございます!お返事が遅くてすみません。

      曲名は私もわかりません。あのシーンは単に、そらで弾ける曲を弾いただけかと思いましたが、何か他にも意味があったのかもと考えるのもおもしろいですね。もう一度観る機会があれば、注意してみます!

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  3. ラストかまあまりにも拍子抜けでした。
    展開なくおわってはぁーっ??って感じでした。

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    1. Wackoさん、コメントありがとうございます。
      ラスト不意に終わる感じでしたよね。まさに拍子抜け(^_^;)

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  5. 今日見てきて、ちとわからんかったので「ネタバレ」で検索させていただきました。え、身重だったんですか。うーん。
    雪山に身重の人連れていくんですか、外国の人って。
    犬好きで、ケイトは子供に恵まれなかったのはわかったんですが。なるほど。
    屋根裏にあがるケイトを犬が吠えるシーンも
    「あがっちゃだめだよ」という感じですかね。ワンちゃんにとっては・・・

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    1. 匿名さん、コメントありがとうございます。
      身重に見えましたが、気づかない方が何人かいらっしゃるのを見ると私の勘違いだったんかしらと自信がなくなってきました(^^;
      なんせ観てから時間も経ってますし。

      それはともかく、外国の人…この映画の舞台であるイギリスではどうなのか私も詳しくないですが、欧米の妊婦さんって活動的なイメージがありますよ^^

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  6. 遅くなりましたが今日観ました。私も元彼女は身重だと思います。スライドの彼女はお腹が大きくそのお腹を愛しそうに手をあてていますから。

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    1. 匿名さん、コメントありがとうございました!
      お返事が大変遅くなってすみません。
      やっぱりおなか大きかったですか(*^○^*)
      だんだん自信がなくなってきてたので、ちょっとホッとしました(笑)。

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  7. 恋人は妊婦さんでしたよ。それでケイトが余計に強くショックを受けた事がよくわかりました。かなりのわだかまりの原因なので、重要なとこだと思います。

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    1. 匿名さん、コメントありがとうございます。
      やっぱりあれがわだかまりの原因になってますよね。

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