2017年8月14日月曜日

『母と暮せば』を観て思うこと

テレビジャパンで放映された2015年の日本映画『母と暮せば』、英語字幕もついていたので途中までは夫といっしょに観ました。


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以下、ネタバレが含まれますのでご注意。
(あらすじはありません)




これ、邦題だけ聞くと長崎の原爆の話だとは思わないんですが、英語タイトル "Nagasaki: Memories of My Son" にはしっかりと「長崎」という単語が入り込んでいるうえ、「息子の思い出」というフレーズが続くので、「長崎の原爆で亡くなった息子の話なのかな」とすぐに内容が推測できます。

まあ Living with my mother とか、邦題をそのまま英語にしてしまったら英語の人の興味をひかないんですかね。


映画そのものの感想をざっくり書くと、


うーん、全体的には淡々としていて起伏にとぼしい感が否めませんでした。

でも、日本人だからこそなんでしょうか、心の琴線に触れてくるシーンがちょこちょこありました。

「お母さん」が息子の大学の教授(橋爪功)の死の成り行きを語るとき、教授をみとった看護師さんもまた原爆症で亡くなった、というところで号泣してしまったし。

原爆の恐ろしいところのひとつは、爆弾による直接の怪我で亡くなったり負傷したりするだけでなく、元気に見えた人でも原爆症で倒れてしまうところだと思うのです。

そういう恐ろしさ、原爆を落とされた国の私たちしかわからないのでしょうか。

アメリカなどの大国が、軽々しく「核爆弾を落とすぞ」とか他国を脅したりしてはいけないと思います。どんな状況であれ、その国の一般市民を大量殺りくすることが許されるべきではないと思います。

アメリカの映画やドラマで「nuclear bomb(核爆弾)」が軽く扱われている気がして、そういう場面を観るたびにイライラします。

核爆弾を落としたらどうなるか、ほんとうに知ってますか?
せめて広島ドームや原爆資料館を訪れてみてからにしてちょうだい。

と叫びたくなります。


話がそれました。

この映画は反核を叫ぶ「反戦映画」ではありません。「戦争」映画でもない、戦争で息子を2人とも失い、たった1人のこされた母親が死んだ息子の亡霊と語りながらただ淡々と暮して行くお話なんです。

「亡霊」なのに「淡々と」ってヘンな話ですが、このお母さん、ものごとに動じないんですよね。唯一、激しい感情を見せたのは、息子の婚約者だった町子が新しい婚約者を連れてあいさつに来たあと。「なんで町子だけが幸せになるの」とつらそうに息子にこぼすときのみ(これいちばん切ないシーンかも)。


しかし、原爆の被害者の遺族を扱うお話の中でも異色だと感じたのは、主人公のお母さんがクリスチャン(カトリック)だということ。

クリスチャンであることがお話の中心ではないのですが、わりとひんぱんにお母さんがお祈りを捧げているシーン、教会のシーンなどが出て来ます。息を引き取る晩も、お母さんは就寝前、「主にこの魂をゆだねます」と祈ります。

アメリカという国も、一応「キリスト教をいしずえとしてできた国」のはずなのに、同じ神を信じる者をも無差別に殺してしまう爆弾を落としたんだ、と気づかされ、ハッとさせられました。

キリスト教徒の多いドイツなどとも戦ってたわけだから、クリスチャンは殺さない、というわけじゃないこともわかってるんですが…なんだかハッとしたんですよね。


お話そのものと関係ない部分では、吉永小百合さんの実年齢を知っていると、二宮和也と「親子」と言うのはちょっと苦しいと思ってしまうところだけど、あまりにも若々しく50代くらいにしか見えないので、全くそこは違和感なかったです。

それよりも、黒木華の演じる女性の婚約者を演じるのが浅野忠信って…!ちょ、ちょっといくらなんでも年齢差ありすぎじゃないですかね、と苦笑しちゃいました。

また、公式サイトやウィキペディアを見ると、この作品が生まれた背景がわかって興味深いので、リンクを載せておきます。

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『母と暮せば』
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Posted on Monday, August 14, 2017
(日本では8月15日、奇しくも終戦記念日ですね)

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2 件のコメント:

  1. この映画は存じませんが(失礼)吉永小百合さんは、どんな役をされても「美しく」見える、唯一の昭和の香りの女優さんですね。

    日本人としては、核兵器に敏感になるのも解ります。
    欧米の「核攻撃は必要な処置」とかの反応を観ると、自分の国に同じ事が起こってもそう言えるのかしら?と悲しいですね。9.11以降は少し違うんでしょうけど。何だか「どうして人を殺しちゃいけないの?」と真剣に聞く10代少年を見る気持ちになります…自分は体験して無くても、想像力って無いの?って。

    身内に戦争体験の無い核家族が増えたせいですかね?
    毎年8月のお盆時期になると、祖母が「戦争はもう絶対しちゃいけない」と繰り返してたのを思い出します

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    1. エデさん、コメントありがとうございます!
      吉永小百合さん出演の映画ってほとんど観た記憶がないのですが、この映画で「これぞ日本の女優さん!」という認識を新たにしました。

      そうなんです、自分の国の国民が犠牲になってからじゃ遅いので、日本の受けた被害をじっくり知ってもらいたいものです。

      うちの祖母は家族を戦争で亡くしているせいか、米英は鬼畜生だ、とよく言っていました。人を人と考えないように教える戦争は怖いですね。

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