2017年2月11日土曜日

The English Patient(『イングリッシュ・ペイシェント』)を観て

1996年に公開(日本公開は1997年)された『イングリッシュ・ペイシェント』をテレビでやってたのを久しぶりに観ました。


5年前に『つぐない(原題 "Atonement")』を観たあと「English Patientを観たときのような切なさで胸がいっぱいに」と書いてましたが(こちらに当時の感想を転載しました)、切ない話だとわかっていてもやっぱり最後は泣いてしまった。

しかし、ずいぶん前に日本で観たときと、カナダに移住して数年経った今では観点が変わり、別の意味でも興味深く観ることができました。




以下、ネタバレが含まれます(細かいあらすじはなし)




最初に観た時、たぶん途中までは「だらだら長い映画だな〜」と少し退屈してちゃんと観てなかったんだと思う。こういう「大人の恋愛映画」にあまり興味なかったし、それが「不倫」の話となるとなおさら。

ラスト近くで亡くなった恋人を抱いて号泣するシーンには胸を打たれ、強く印象に残っているのですが、それ以外に当時わかっていなかったことがたくさん発見できました。

たとえば、主人公を看護する女性がカナダ人だということを全然覚えてなかった(当時わかっていたのかも不明)。演じるジュリエット・ビノシュを初めて見たのがこの映画だったので英語を話す彼女の印象が強く、のちにフランス人だと知ってビックリ。

英語を話すハナ役になぜわざわざフランス人のジュリエットが配役されたのか謎でしたが、カナダ人だったらフランス語を母語とする人がいるので今さらながら納得(英語ウィキを見ると「フレンチ・カナディアン」とあります)。

(そもそも原作の小説を書いた人がカナダ人だった。どうせなら本当のフレンチ・カナディアンをハナにしてほしかった気もする。フレンチかどうか知らないけど同世代のカナダ人女優にはキャリー・アン・モスとかローリー・ホールデンとかいますから…でも当時は無名だったのかも)

また、「イングリッシュ・ペイシェント」というタイトルのとおり、主人公はイギリス人だと思い込んでたのがまちがいだったことに初めて気づきました。

なぜわざわざ「イギリス人の患者」というタイトルを付けているのか、その理由を全く深く考えてなかったのですが、今回ようやく意味がわかりました。

(余談ですが邦題をなぜ原作小説のタイトルのまま「イギリス人の患者」にしなかったのかなあ…そのほうがわかりやすいと思うんだけどね)

その「イギリス人の患者」、アルマシーはイギリス人ではなくハンガリー人だったのですね。イギリス側に名乗ったときに「アルマシー」というイギリス系ではない名前のせいでドイツ側のスパイではないかと疑われて拘束されてしまうのですが(そのせいでほら穴に置いて来たキャサリンの元に戻れずキャサリンは死亡)、皮肉なことに、重傷を負って記憶を失い、自分の名前を思い出せないアルマシーは「イギリス人の患者」と呼ばれるようになるという…。

これは、スリランカで生まれ11才でイギリスに移住し、その後カナダに移住した原作者マイケル・オンダーチェの経験が織り込まれているような気がしてなりません。

名前で差別を受け苦労した人を周囲で多く知っていたのでは、あるいは著者自身が苦労した経験を風刺したのではないかと勝手に想像します。

アルマニーは、イギリス人のグループとともに行動し地図を作る、いたって平和な生活をしていたのに…。


なんだか現在の某国大統領が某諸国出身の人をテロリスト扱いしたり某国出身者を違法移民/犯罪者呼ばわりしたりしているのに通じる気がします。

時代は変わってもこういった差別をする人は必ずいるということかと思うと、最初に観たときとは違う意味で切なくなっちゃう、というか暗澹とした気持ちになる(´▽`;)


話が映画からそれてしまいましたが、とにかく今まで思っていた「切ない大人の恋愛映画」という枠をこえたテーマがあったことには間違いないでしょう。



最後に、「おお!あの人が出てたのね」とビックリした2人について。

コリン・ファース…『ブリジット・ジョーンズの日記』の5年前の映画ということで、若い!それでもおじさんぽく見えるのはなぜだろう(笑)。

ナヴィーン・アンドリュース…『LOST』のサイード役で有名な彼、この映画に出てることはロストを観たとき調べて知ってたけど、インド人の役だとは知らなかった。ロストでは中東系の役ですが、実際はインド系イギリス人。この映画でインドなまりで話すことには以前は気づかなかった!ハナと恋愛関係になることも忘れててビックリしました(笑)。


追伸

いろいろ賞を獲った作品なので、12部門にノミネートされて9部門で受賞したアカデミーの分だけでもメモっときます:

<受賞>
作品賞
監督賞(アンソニー・ミンゲラ)
助演女優賞(ジュリエット・ビノシュ)
劇映画音楽賞(ガブリエル・ヤレド)
録音賞
美術賞
撮影賞
衣装デザイン賞(アン・ロス)
編集賞

<ノミネート>
主演男優賞(レイフ・ファインズ)
(受賞は『シャイン』のジェフリー・ラッシュ)
主演女優賞(クリスティン・スコット・トマス)
(受賞は『ファーゴ』のフランシス・マクドーマンド)
脚色賞(アンソニー・ミンゲラ)


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4 件のコメント:

  1. 同じく最初観た時は、長い映画だなぁ~って思いましたよ。
    これ、この監督の特徴ですよね。
    同監督の作品、他にリプリーとコールドマウンテンを観たことがあるんですけど、実際の尺が長い上に、話の展開が遠回りで余計長く感じるんですよね~

    あと、当時すでに演技派トップクラスのジュリエットビノシュが助演で出演してたことにちょっと違和感を感じてたんですけど、
    アカデミー賞にノミネートされた出演者3人の中で、受賞したのが結局彼女だけだったことに妙に納得しました。
    主役と言ってもいい、というか主役じゃないの?って存在でしたもんね~

    ちなみに余談になりますけど、
    この作品が受賞した時のアカデミー賞授賞式、ビリークリスタルが司会者だったので、まるまる観てしまいました。
    僕の中では、彼は俳優というよりもアカデミー賞の司会者なんですよ(笑)
    ノミネートされた作品のワンシーンと彼を合成させたコメディー仕立ての映像は爆笑しましたからね~

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    1. じゃとむさん、コメントありがとうございます^^
      おおお、リプリーはアンソニー・ミンゲラだったんですね!
      大好きな映画で何度も観てます。
      じゃとむさんはいまいちでしょうか…

      ジュリエットビノシュもよかったけど、私はレイフ・ファインズがすごいと思いましたね、この映画。確かにジュリエット(ハナ)が主役みたいな感じでしたよね。クリスティンスコットトマスより目立ってたような。

      じゃとむさんはこの年のアカデミー授賞式ご覧になったんですね!貴重ですね。そのコメディー仕立ての映像って授賞式のはじめにやるやつでしょうか。その頃からすでにその伝統ができてたんですね〜。

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    2. リプリーは嫌いじゃないんですけど、原作の最初の映画"太陽がいっぱい"と比較して観てしまったので、この映画の良さをじゅうぶん感じとれてなかったと思います。
      もう一度観てみたい作品です。

      あとアカデミー賞授賞式、衛星放送が一般に普及するようになった90年代にNHKBSで生中継をしていたので、
      それを録画して観てたんですけど、長いのでとばしとばし観てました。
      ただビリークリスタルが司会の時は面白いので最後まで観れましたね~
      イングリッシュペイシェントが受賞した年は他にザ・エージェントもノミネートされてたので、式のはじめの合成映像に使われてましたよ。
      トム・クルーズがShow me the money!!!と叫ばされるシーンやシャワールームの壁を蹴るシーンが使われてて、
      キューバグッディングJr.のところをビリークリスタルにかえて合成してたんですが、おもしろかったですよ~
      他にファーゴのもどすシーンやシャインのとびはねるシーンなどもおもしろくて強く印象に残ってます。

      それとご覧になったことがあるかもしれませんが、レイフファインズとジュリエットビノシュ、イングリッシュペイシェントの数年前に嵐が丘の主役で共演してるんですが、ふたりの演技合戦というか、ふたりのオーラっぷりがスゴい映画でした。
      機会があれば是非ご覧になってみてください。
      作品そのものもおもしろかったです!

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    3. じゃとむさん、私は『太陽がいっぱい』を知らずに観たんですが、『リプリー』が同じ小説を原作としていることを知って原作を読み太陽がいっぱいも観ました。たしか全部それなりによかったような…でも最初に『リプリー』から入ったせいか、やはりリプリーがいちばん印象に残っているし好きかな〜。じゃとむさんも機会があったら原作も読んでみて下さい(*´▽`*)

      ビリークリスタルの合成映像観たいな〜、YouTubeで探してみます(笑)。シャインは観たことないんだけども。

      嵐が丘は映像化されたものは観たことないので、ぜひ見てみたいです!

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